自分が15年間もアメリカンフットボール選手を続けるなんて、
思っても見なかった。
ヘルメットのフェイスガード越しに見る全ての風景が大好きだった。
出勤前の早朝トレーニングも大好きだった。
グランド脇の歩道橋を使った坂道ダッシュも大好きだった。
練習前の緊張したミーティング、
練習後のチームメイトとのリラックスした時間。
そこで交わされる会話、笑いが大好きだった。
トレーナー、スタッフ、マネージャー、コーチ、そして選手たち。
みんなが集まって醸し出す練習グランドの雰囲気が大好きだった。
関係者入り口の回転扉をくぐって入る、
しぃんと静まった試合前の東京ドーム。
無言でストレッチをしてテーピングを巻く。
その緊張感と心の高ぶりが大好きだった。
人間としての思考回路を遮断して、動物としての自分を呼び覚ます。
対戦相手に全力で体をぶつける。相手を倒して叫ぶ。拳を握る。
どよめくスタンドと、
オーロラビジョンにスローモーションで再生される自分の姿。
チアリーダーの音楽と観客の声援。全てが快感であり幸せだった。
敗戦に繋がるミスに泣き崩れるチームメイト。
彼を抱きかかえるチームメイト。
静まり返った選手用ロッカールーム。黙って選手のケアを続けるトレーナー。
敗戦にひとりで向き合うことが辛くて皆が集まる深夜の居酒屋。
泣いているチームメイト。無理して笑っているチームメイト。
暴れているチームメイト。
その空間が大好きだった。
日本一達成の瞬間。フィールドになだれ込むみんな。
コーチ、マネージャー、トレーナー、みんなが笑っている。泣いている。抱き合っている。
観客席の上司と金網越しに視線を合わせ、頷き合う。溜まっていた感情が爆発する。
祝勝会で酔っ払った社長が叫ぶ。
「俺わぁっ、社長になってぇ、今日が一番嬉しいっ!」
選手の家族も笑っている。チームのOB・OGも笑っている。
最高に幸せな時間。
チームを通じて出会う事、人、全てが大好きだった。
大好きな仲間と大好きなスポーツ、そして練習グランドの芝生の匂い。
この時間がずっとずっと続けば良いなと思った。
これが仕事だったらどんなに幸せだろうと思った。
プロになりたかった。
日本のアメリカンフットボールがプロだったら、どんなに良かったろう。
遠い将来、「お爺ちゃんは昔プロのスポーツ選手だったんだよ」と、孫に言ってみたかった。
日本のスポーツ界の健全発展のために貢献しよう。と強く思う。